AMBERGRIS
龍涎香とは…
龍涎香(りゅうぜんこう)とは、マッコウクジラの体内で生成される結石状の物質です。消化されにくいイカのくちばしなどを包み込む過程で形成され、長い時間をかけて海へ放出されます。その後、海中で熟成されることで、独特の芳香を帯びる、時間そのものが宿る幻の香料です。
FIVE KEYS FROM THE DEEP
本来のあなたへ還る、
海から届いた贈り物
Ⅰ深海で生まれ、時を漂ってきた香り
くじらの体内で生成され、時間をかけて海へと放出されます。さらに30年から100年もの長い年月を海で漂いながら太陽と塩で熟成され、得も言われぬ香りをまとい、やがて岸へと辿り着く希少な存在。時間そのものを宿した天然香料とも言えます。
Ⅱ時を超えて、人を魅了してきた香り
千年以上前から「幻の香料」としてその存在が知られ、様々な文献や物語に登場します。中東や中国の宮廷では王への捧げものとして、英国では戴冠式の聖油に配合されるなど、神聖な儀式の香りとしても用いられてきました。クレオパトラやマリー・アントワネットも愛用したと語り継がれるほど、古今東西、多くの人々を魅了してきました。
Ⅲ境界のあわいから届く、神秘の結晶
空と海、海と陸、内と外、物質と香りという目に見えない領域と…龍涎香は、相異なる2つの世界を結び、その境界を越えてきました。奄美大島では、水平線の彼方にある神の国“ネリヤカナヤ”から流れてくる宝物の一つとして、龍涎香は特別視されていた歴史もあります。
Ⅳ古の知恵と科学が照らす、その本質
漢方では、心腹の痛みをしずめ、気のめぐりを整える薬として用いられてきたと伝えられますが、近年では、主成分アンブレインに、骨代謝の改善やアルツハイマー病の薬剤につながる可能性のある働きが報告され(新潟大学・2020)、ビタミンD受容体に結合する性質も明らかになっています(新潟大学・大阪公立大学ほか・2024)。また、龍涎香様の香りをかいだ人の表情がやわらかくなったという研究結果も(奈良教育大学・カネボウ化粧品 2013)。
この香りに触れた人々からは、心がふわっとゆるむ、身体が楽になる——そんな静かな声が、今も届いています。
関連研究:Scientific Reports(新潟大学・2020)/Scientific Reports(新潟大学・大阪公立大学ほか・2024)/におい・かおり環境学会誌(2013)
Ⅴ鎧をとかし、真実を浮かび上がらせる
香り――嗅覚は、五感の中で唯一、脳の奥深くへ直接届く感覚です。感情や記憶の領域に触れ、言葉よりも先に、理性よりも深く、私たちの内側へとひらいていく。龍涎香の静かな気配は、固くなっていたものをゆるめ、思考の奥にある感覚へ、そっと光を運びます。
もともとあったものを静かに浮かび上がらせる。
鎧をとかし、本来のあなたへ還るために。 Deep ―― 内なる海へ。